2024年に入ってから株式市場は盛り上がったものの、Jリート市場は盛り上がりにかけていますね。
実際、2024年に入ってから東証REIT指数の価格は下落しています。
実際、東証REIT指数は以下の通り大きく下落しています。
ここ4年で大きく株式(TOPIX)に差をつけられているように見えますね。
しかし、これはあくまで配当なし指数の推移です。配当利回りが高いリートにとっては不利な結果になるのは当たり前です。
配当金をださずに再投資した「配当込み」の東証REIT指数とTOPIXの比較は以下となります。
直近までは配当込みの東証REIT指数が優位な状態でしたが、遂に配当込みのTOPIXに抜かれていますね。
そして2021年からは右肩下がりに下落しています。この状態をみて、Jリートはどこまで下がるのかと懸念されている投資家の方は多いことかと思います。
今回は、そもそもなぜJリートが下がっているのかをお伝えした上で、今後の見通しについてお伝えしていきたいと思います。
Contents
そもそもなぜJリート(REIT)が下がっているのか?
まず、なぜJリートが下がっているのかという点についてみていきましょう。
理由①:日本銀行が金融引き締めを開始した
不動産市場にとって金利水準は非常に重要です。基本的には不動産は金融機関から借入を行なって購入します。
そのため、金利が高くなると借入をする動機が小さくなります。そのため、不動産の投資需要が小さくなり不動産価格が低下していきます。
アベノミクスによる大規模緩和によりゼロ金利さらにはマイナス金利の時代がつづきました。
しかし、パンデミック以降に米国を中心としてバラマキを行い1970年以来の強烈なインフレが発生しました。
日本では当初インフレは発生しませんでした。
しかし、022年以降は円安に加えてウクライナ危機でエネルギー価格が上昇した影響をうけて日本でもインフレが発生していきました。
現在の水準は消費税増税に影響を除けばバブル期以来の高さになっています。
日本銀行のインフレ率の目標は2%であることを考えると、2024年時点でもインフレ率は上振れている状況になっています。
しかし、日本は実質賃金が低く景気が悪いので米国のように金利は引き上げることはできませんでした。
[東京 6月5日 ロイター] - 厚生労働省が5日に公表した4月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金は前年比0.7%減少し、25カ月連続の前年割れとなった。春闘の影響で所定内給与の伸びは拡大したが、働き方改革による残業の減少に相殺された。ただ、賃上げに加え物価上昇率が縮小したことにより、賃金の減少幅は3月の2.1%よりは小さくなった。
参照:ロイター
結果として日米で金利差が拡大していきドル円は110円から160円の水準まで上昇していきました。
しかし、米国の景気後退懸念とこれからお伝えする日本銀行の利上げサイクルの開始によって日米金利差の縮小が意識されて140円台まで円高調整が進みました。
円安が進むと輸入コストが増大して更にインフレが進行するという悪循環が続いていきます。
実際、円安によって輸入物価は再び上昇に転じる動きを見せています。
そのため、景気が悪い中にあっても円安を抑制するために2024年7月に遂に日銀は利上げに踏み切りました。
記者会見の中で植田総裁は、今回、追加の利上げに踏み切った理由について「経済・物価はこれまで示してきた見通しにおおむね沿って、推移しているが、輸入物価が再び上昇に転じており、先行き、物価が上振れるリスクに注意する必要がある状況となっている。こうした状況を踏まえ、2%の物価目標の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断した」と述べました。
そして、継続的に利上げを実施することを匂わせたことで急激な株安と円高になったのは記憶に新しいですね。
政策金利は変動金利に影響する短期プライムレートに影響を及ぼします。つまり、変動金利が上昇することを意味します。これは不動産市場にとって厳しいことは想定に難くないですね。
また、変動金利が上昇するよりも前の段階から大規模金融緩和の修正を迫られる状況を想定して徐々に長期金利も上昇してきています。
以下は30年債金利の推移ですが、1%未満の水準から2%を超えるところまで金利が上昇してきています。
固定金利は長期金利の動向に影響されます。つまり固定金利も上昇してきたことを意味します。
変動金利も長期金利も上昇するわけですから不動産価格にとっては当然マイナスに作用してきたことがわかりますね。
金融緩和は資産価格にとってはプラスですが、金融引き締めは反対に資産価格にとってマイナスなのです。
しかし、筆者はこの日銀の金融引き締めは長くは続かないと考えています。この点は見通しの項目でお伝えします。
理由②:リモートワークの推進でオフィス賃料の下落
上記の理由だけだと株式も一緒に下落するはずです。しかし、パンデミック以降、不動産市場には株式とは異なる大きな逆風が吹いていました。
東証REIT指数の業種別の構成比率をみていきましょう。
以下は東証REIT指数(配当込み)に連動する運用成績を目指すダイワJ-REITオープン(毎月分配型)の構成比率です。
構成比率 | |
総合型 | 29.8% |
オフィス型 | 23.5% |
工業用 | 19.2% |
秋雨号住宅用 | 8.9% |
店舗用 | 8.3% |
ホテルリゾート | 7.0% |
その他 | 3.3% |
関連:ダイワJリート
総合型を除くと最も比率が高いのがオフィス型ですね。
総合型というのはさまざまな不動産を組み合わせており、この中にもオフィス型は多く組み入れられています。
このオフィス賃料のこれまでの推移と空室率の推移は以下となっています。
パンデミックを契機としてリモートワークが浸透したこともあり、空室率は大きく上昇して賃料が落ち込んでいますね。
賃料指数(2010年=100) | 空室率 | |
2018 | 120.7 | 1.90% |
2019 | 127.9 | 1.60% |
2020 | 131.5 | 4.50% |
2021 | 110.9 | 6.30% |
2022 | 107.7 | 5.90% |
2023 | 106.5 | 5.60% |
2024 | 106.1 | 5.50% |
2025 | 102.9 | 6.70% |
しかし、2025年は予測では空室率も上昇し、賃料も下がる見通しとなっています。これは新規で更にオフィスが供給されるためです。
需要が沈む中において供給過多となっているわけですね。特に東京の大量供給が影響していそうですね。
理由③:Jリートは賃料収入をメインとしている
更にJリート特有の問題があります。Jリートは得られた利益の90%超を投資家に分配することで残りの利益は免税になります。
通常の上場企業は得られた利益から法人税を支払い、事業投資等のために使う内部留保を確保した上で残りを配当に回します。
そのためJリートはTOPIXに比べて配当利回りが高くなります。しかし、これは諸刃の剣です。
リート法人側としては利益をだしても殆ど分配してしまうので、大きな利益を出すインセンティブが出てきません。
安定した分配をだしながら、預け入れ資産に対して一定の信託報酬を受け取っているだけで十分利益がでるからです。
そのため基本的にJリート法人は賃料収入をメインに据えています。
以下は有名なJリート法人の一つである日本ビルファンド投資法人の直近の売買実績です。保有する物件が約70件あるのに、毎期1つから2つの物件しか売却していません。
殆ど収益に与える影響はなく、ほぼほぼ賃料収入に依拠した形となっています。
実際、殆ど収益に与える影響はなく、ほぼほぼ賃料収入に依拠した形となっています。
そして、賃料収入はさきほどお伝えした通りオフィス関連では得に芳しくない動きとなっているのです。
→ 儲からない?やばい?Jリート(REIT)はおすすめしない理由をわかりやすく解説!
Jリートの2024年以降の今後の見通しとは?どこまで下がる?
それではここまでの話を踏まえて2024年以降の見通しについてお伝えしていきたいと思います。
◾️:金融政策
現状は日銀が金利を引き上げているが世界的な景気後退が迫っており金融引き締めは長続きはしない。
◾️:賃料
最大ポジションを占めるオフィス賃料は今後の大量供給を控えて軟調に推移することが想定される。更に実質賃金が低下しており商業施設などの娯楽施設のテナント料なども軟調に推移することが想定される
まず、金融政策ですが、あくまで円安をおさえるための利上げであることは先ほどお伝えしました。決して景気が強いわけではないのです。
そして、日本の景気にとっても重要なのは米国の景気です。むしろ米国の景気は世界の景気の肝といっても過言ではありません。
米国は長引くインフレと高金利によって遂に経済が疲弊してきており失業率が跳ね上がり始めました。
米国が景気後退に陥ると日本も不景気に陥り金融緩和を再開しないといけない局面に差し掛かります。
景気後退は目前にせまっており、金利が上昇した今がJリートの底値に近い水準であると考えています。
つまり、ここからは不動産を仕込むのに絶好の機会が到来しているともいえるでしょう。
ただ、今後も厳しい見通しが続くオフィスの比率が高く、更に賃料収入をメインに据えるJリートで大きなリターンを見込むのは今後も難しいでしょう。
ただ、売却益を中心に据えた王道の不動産投資を実践することができれば株式を大きく上回るリターン獲得を狙うことが可能となります。
ここからは年率20%のリターンを狙う不動産投資の方法についてお伝えしていきます。
東証REIT指数の組み入れ比率が少ない住宅用不動産は堅調に推移している
もう一度東証REIT指数の構成を見ていただきたいのですが、以下のとおり住宅用の不動産(集合型)はわずか8.9%となっています。
ただ、住宅用不動産についてはよくニュースで目にするので皆さん理解されているかと思いますが、力強い価格推移となっています。
得に東京の住宅用不動産の価格上昇は目を見張るものがあります。
この理由は以下が挙げられます。
東京の不動産価格が力強い理由
- 東京に偏在する大企業の所得の増加
- 共働き世帯の増加により与信の増加(ペアローン)
- 円安によるタワーマンションへの外国人の投資需要
日本人全体の実質賃金は弱い動きを見せていますが、東京の大企業の給与水準はインフレ率を上回るレベルで引き上げられています。
実際、大手企業の春闘の結果、5%以上の賃上げが実現しています。3%程度のインフレを上回る水準ですね。
そして、東京では大企業の総合職同士が結婚するパワーカップルが増加しています。
一人の与信では購入できない不動産も、夫婦の与信をフル活用すれば購入することが可能になるのです。
実際、筆者も先日吉祥寺の1.8億円の土地(上物代は別途必要)を購入しようか検討し見送りましたが、即日ペアローンでの申し込みがあったとの話を聞きました。
女性の社会進出の影響が出てきているといえるでしょう。
更に、タワーマンションなどについては円安によって外国人からの需要が旺盛な状況となっています。
1ドル110円の水準から160円の水準まで円安が進行しているので、外国人がドル建でみるとお買い得な価格帯になっているのです。
この円安の流れは貿易収支と金融収支の側面からみた資本流出を伴い長期的な潮流となっていきます。
円安が進むことは生活は苦しくなりますが住宅用不動産市況にとってはプラスになるのです。
関連:1ドル200円時代へ向かう根拠を解説!今後の円安時代に備えて対策を取ろう!
ただ、不動産投資は労力がかかりますし個人投資家が安易に参入すると食い物にされる市場でもあります。
相場環境に依拠せずに高いリターンが狙える投資先については以下でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。