金融後進国である日本の金融市場にもグローバル化の波は押し寄せています。現在では日本の証券会社からでも海外の株式が購入できるようになっています。
それに伴い様々な外国株に投資する投信が組成されています。当サイトでも様々な投信をお伝えしてきました。
本日お伝えするのはインベスコ世界厳選株式オープン(愛称:世界のベスト)です。
世界のベストは全世界株を対象とする投資信託のなかで買い付けランキングは第二位の人気投信です。
今回は世界のベストについて特徴をお伝えした上で以下の点をお伝えしていきたいと思います。
✔︎なぜ人気なのか?
✔︎過去からの運用実績はどうなのか?
✔︎今後の見通しはどうなっているのか?
世界のベストは直近以下の通り大きく下落していますので、この要因と今後の見通し(クリックしてジャンプ)についてもお伝えしていきます。
それでは詳しく見ていきましょう。
Contents
インベスコ世界厳選株式オープン(愛称:世界のベスト)の特徴
それでは説明資料を元にインベスコ世界厳選株式オープンの特徴についてみていきたいと思います。
そもそも運用会社のインベスコとは?
インベスコは米国のアトランタを本拠地として世界25カ国以上で展開する世界有数の規模を誇る独立系の資産運用会社です。
運用資産は191兆円を超えており、ニューヨーク証券取引所にも上場しS&P500指数の構成銘柄にもなっています。
長期的な世界の成長を享受する株式を厳選!「成長」「配当」「割安」を追求!
一言に投資といっても、1日で取引を終えるデイトレードや、数週間から数ヶ月のスイングトレード、長期にわたり保有する長期投資と期間によってスタイルがあります。
世界のベストは特定の国や地域にのみ投資対象を限定せずに、短期的な市場の変動に一喜一憂せず長期的な投資を行うと宣言しています。
つまり、トレードではなく長期投資ということですね!
狙う銘柄は成長と配当と割安を追求しているとしていいます。
ちょっと矛盾している内容ですね。基本的に成長企業というのは割高ですから。
いいとこどりだけをすると明言していますが、それが出来れば誰も苦労しません。
運用プロセスとファンドマネージャー
世界のベストの運用プロセスは「投資アイデアの発掘」→「ファンダメンタルズ分析」→ 「ポートフォリオ構築」のながれで先進国企業20,000社から約50銘柄を選定します。
運用は英国拠点の運用チームがになっており、ファンドマネージャーはベテランのスティーブン・アネスが担当すると述べられています。
グローバルな運用会社ならではの情報網や分析力を駆使しているとしていますね。
6つのパターンが存在!どのパターンが資産形成を考える上では最適?
世界のベストは以下の6つがあります。
- 為替ヘッジあり・毎月決算型
- 為替ヘッジあり・年1回決算型
- 為替ヘッジあり・奇数月決算型
- 為替ヘッジなし・毎月決算型
- 為替ヘッジなし・年1回決算型
- 為替ヘッジなし・奇数月決算
決算の回数が多くなるほど分配利回りが高くなっていきます。
一度、分配金を拠出すると税金を20.315%払わないといけないので、再投資するにしても金額が小さくなってしまいます。
資産運用で大きな資産を築くためには長期で複利運用することが前提です。決算は一番少ない年一回決算を選ぶのが懸命でしょう。
次に為替ヘッジの有無について考えていきましょう。
為替ヘッジがないバージョンではドル円が上昇すると基準価額が上昇します。一方、ドル円が下落すると基準価額が下落します。
一方、為替ヘッジありのバージョンは為替変動リスクを追いませんが金利コストを負担することになっています。
筆者の考えとしては直近半年以内という期間を見据えるのであれば為替ヘッジありの方がよいと考えています。
2022年以降、ドル円は日米金利差に連動する形で急激に上昇していきました。
米国では2021年後半から発生したインフレに対応するために政策金利を引き上げて対応していきました。
結果として日米金利差は拡大しドル円は160円近辺まで円安が進行しました。
しかし、日銀の金利引き上げと景気後退によって日米金利差が縮小しドル円は140円まで急落しました。
しばらくこの流れは継続します。ドル円も今後半年というタイミングであれば下落することが見込まれるので為替ヘッジをしたほうがよいと考えています。
しかし、長期間為替ヘッジをつけると年間5%程度の金利コストを負担することになります。
また、インフレは1回で収束するとは考えておらず、今後も何度にもわたって発生することを見込んでいます。(後述)
インフレが再び発生すると日米金利差は拡大してドル円は上昇していきます。
関連:1ドル200円時代へ向かう根拠を解説!今後の円安時代に備えて対策を取ろう!
筆者としては長期的な視点で考えるのであれば140円まで低下した現時点ではドル円が長期的に上昇する可能性が高いと考えているので為替ヘッジなしを選択します。
つまり纏めると、投資期間を半年以内で考えるなら年一回決算バージョンの「為替ヘッジあり」、半年以上を考えるのであれば年一回決算バージョンの「為替ヘッジなし」が推奨となります。
構成上位銘柄
2024年5月末時点で、構成上位銘柄は以下となります。
マイクロソフトがあまりにもメジャーですね。3iグループは英国の投資会社です。
非公開企業に投資するPE事業では一般消費財・サービスやヘルスケア分野の企業、インフラ事業では欧州の企業を中心に投資を行なっています。株価は好調です。
前回分析した2023年3月末からの推移は以下となります。ほとんど構成上位銘柄は変わっていませんね。長期投資をしているのが伺えます。
2024年5月末 | 2024年2月末 | 2024年1月末 | 2023年8月末 | 2023年6月末 | 2023年3月末 | |
1 | 3i グループ | 3i グループ | 3i グループ | 3i グループ | 3iグループ | 3iグループ |
2 | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト | ベラリア | ブロードコム | ベラリア |
3 | ユナイテッドヘルス・グループ | ユニオン・パシフィック | ユナイテッドヘルス・グループ | ブロードコム | マイクロソフト | AIAグループ |
4 | テキサス・インスツルメンツ | ユナイテッドヘルス・グループ | ユニオン・パシフィック | マイクロソフト | ベラリア | アメリカンタワー |
5 | ブロードコム | ブロードコム | ブロードコム | アメリカン・タワー | アメリカンタワー | マイクロソフト |
6 | ユニオン・パシフィック | テキサス・インスツルメンツ | テキサス・インスツルメンツ | ユナイテッドヘルス・グループ | AIAグループ | ブロードコム |
7 | ロールス・ロイス | アメリカン・タワー | アメリカン・タワー | レキットベンキーザー | ユナイテッドヘルス・グループ | ユニオンパシフィック |
8 | アゼリスグループ | アゼリスグループ | アゼリスグループ | ユニオン・パシフィック | ユニオンパシフィック | ロイヤル・ユニブリュー |
9 | AIAグループ | プログレッシブ | プログレッシブ | AIAグループ | ロイヤル・ユニブリュー | ユナイテッドヘルス・グループ |
10 | ベラリア | トラクター・サプライ | AIAグループ | ロイヤル・ユリブリュー | アケルBP | コカコーラ |
購入手数料と信託手数料
手数料は以下となっています。
購入手数料:税込3.3%
信託手数料:年率税込1.903%
インベスコ世界厳選株式オープン「世界のベスト」の運用実績
世界のベストの運用実績は以下となります。以下は「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」の年一回決算型です。
ベンチマークであるMSCIワールド・インデックスに劣後した成績となっています。アクティブ投信として不甲斐ない成績ですね。
(あくまで最新の2024年6月末までのレポートなので2024年7月中旬からの下落については入っていません。今後の見通しの項目で詳しくお伝えします。)
為替ヘッジなし | 為替ヘッジあり | |
---|---|---|
2023年 | 9.21% | 18.95% |
2022年 | ▲0.28% | -10.60% |
2021年 | 13.72% | 23.28% |
2020年 | -29.76% | -5.67% |
特に「為替ヘッジあり」のバージョンは世界のベストは2020年のバブルを経験した上で殆ど増えていないという残念な結果になっています。
為替ヘッジなしのバージョンも先ほどお伝えしたとおり今後ドル円が下落する確度が高いので「ヘッジなし」のリターンは今後厳しい局面を迎えることが想定されます。
2024年6月の現時点で投資するのであれば、「ヘッジあり」が妥当な選択肢になると考えています。
先ほどもお伝えした通り、ベンチマークであるMSCIワールド・インデックスに負けているので投資する妙味は低いです。
筆者はインデックスに対してプラスのリターンを叩き出しているヘッジファンドという選択肢に目をつけて投資しています。
以下の通りヘッジファンドはS&P500指数や全世界株式に対してリスクを抑えながら安定したリターンを叩き出しています。
以下で筆者が投資しているファンドを含めてお伝えしていますのでご覧いただければと思います。
大人気の理由とは?世界のベスト(毎月決算型)の高い分配利回りのカラクリを紐解く!
では最初のお題についてお伝えしていきたいと思います。なぜ、世界のベストは人気なのでしょうか?
その理由は分配利回りの高さにあります。特に「為替ヘッジなし」の毎月分配型バージョンの分配利回りは20%となっています。
以下は「為替ヘッジなし」バージョンの分配実績です。
年合計 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
2023年 | 1,800円 |
150 (01/23) |
150 (02/24) |
150 (03/23) |
150 (04/24) |
150 (05/23) |
150 (06/23) |
150 (07/24) |
150 (08/23) |
150 (09/25) |
150 (10/23) |
150 (11/24) |
150 (12/25) |
2022年 | 1,800円 | 150 (01/24) |
150 (02/24) |
150 (03/23) |
150 (04/25) |
150 (05/23) |
150 (06/23) |
150 (07/25) |
150 (08/23) |
150 (09/26) |
150 (10/24) |
150 (11/24) |
150 (12/23) |
2021年 | 1,800円 | 150 (01/25) |
150 (02/24) |
150 (03/23) |
150 (04/23) |
150 (05/24) |
150 (06/23) |
150 (07/26) |
150 (08/23) |
150 (09/24) |
150 (10/25) |
150 (11/24) |
150 (12/23) |
2020年 | 1,800円 | 150 (01/23) |
150 (02/25) |
150 (03/23) |
150 (04/23) |
150 (05/25) |
150 (06/23) |
150 (07/27) |
150 (08/24) |
150 (09/23) |
150 (10/23) |
150 (11/24) |
150 (12/23) |
2019年 | 2,100円 | 150 (01/23) |
150 (02/25) |
300 (03/25) |
150 (04/23) |
150 (05/23) |
150 (06/24) |
150 (07/23) |
150 (08/23) |
150 (09/24) |
150 (10/23) |
150 (11/25) |
300 (12/23) |
現在、毎月決算型の「為替ヘッジなし」は現在基準価額が9500円程度なので1800円の分配金で考えると20%の分配利回りになります。
そして元々の基準価額が10,000円なので元本が5%しかへっていないので人気となっているのです。
ただ、冷静に考えてみてください。
さきほどお伝えしたとおり、全世界株式のリターンより劣っているファンドが20%近い利回りをだしているのです。
そして現在は元本から配当をだしている特別分配金の状態となっています。
ここから運用リターンがマイナスになるような状況となれば、当然減配になりますし基準価額も下落していきます。
この数年調子が良かったからといって今後も高分配を期待するのは辞めておいたほうがよいでしょう。
たまたま相場環境がよかっただけに過ぎないということをしっかりと認識しておきましょう。
掲示板での評判や口コミ
掲示板は年一回決算型ではなく、毎月決算型の方が賑わっています。
未だに日本の金融リテラシーは低く、毎月分配型の投信が選好されていますが複利が毀損するので全く合理的ではありません。
また、多くの毎月分配型投信においては元本から払い出す特別分配金をだしているので注意が必要です。
世界のベストも、為替ヘッジの有無に関わらず特別分配金となっています。
分配金をもらえているはずが、実際は元本から払い出されているという事態になっていることに気づいていない方がたくさんいます。
例えば以下の方です。基準価額が減少しているのをしっかり確認できているのでしょうか?
H無の口コミ
皆さんのおっしゃる通り、安心の分配で人気ですね
他の投信からの移動も含めこれからもどしどし買い増しして行こう!
また、「為替ヘッジあり」で購入した方は以下のように嘆いています。
しかし、先ほど説明したように今後半年という期間でみると「為替ヘッジあり」の方が良い成績を叩き出す確度が高いです。
H有の口コミ
リアルに証券屋のミスでこっちを持つことになってしまいました、、本当はH無がほしかったです。
どなたかこの銘柄の良いところ教えてくださいませんでしょうか?よろしくお願い致します
今後の見通し!急落の理由と今後の見通しとは?
重要なのは今後の見通しです。最初にお伝えした通り、世界のベストは直近大きく下落しています。
この原因は大きく2つあります。そして、この問題は解決されておらず今後も厳しい状況となることが見込まれています。
世界のベストの見通しで重要になってくるのは米国株の見通しです。欧州も日本の株式も基本的に米国株の影響を受けるからです。
問題①:高まる米国の景気後退懸念
米国では2021年後半から発生した高インフレと高金利によって景気後退の懸念が高まっています。
実際、失業率は既に急激に上昇を始めており今後景気後退入りする可能性が高まっています。
景気後退となると、失業者が増え人々の消費も落ち込み、企業の収益も低下していきます。企業収益が低下すると、当然株価も下落していきます。
現在はまだ景気後退懸念の段階です。今後本格的に景気後退となった時は◯◯ショックという名前がつく大きな下落になる可能性があります。
問題②:日本銀行の金融引き締めの開始で円キャリートレードの巻き戻しが発生
今まで米国が高金利を維持しているにも関わらず、日本が低金利を持続したことで円キャリートレードが盛んに実施されていました。
円キャリートレードとは低い金利で円を調達して、ドルに変換して米ドル建shシアンで運用する戦略です。
直接ドルを調達すると高い金利を支払う必要があるので、低い金利の円を調達する需要が旺盛だったということですね。
ただ、円キャリートレードは為替リスクを負います。ドル円が上昇する間は為替差益も享受することが可能です。ただし、ドル円が下落すると逆回転が起きます。
そして、直近その逆回転が発生しました。
2024年7月に日本銀行の植田総裁は今後利上げを継続して実施するという会見を行いました。
これによって今後日本の金利が上昇するとともにドル円が下落するという蓋然性が高まりました。
ドル円が大きく下落すると結果的に損失をこうむることになるのでポジションを解消する動きが発生します。
保有している株式を売却してできたドルを円に変換することで、株安と円高が発生します。これが7月から8月の上旬に発生しました。
この流れは日銀が引き締めを続ける間は継続します。
そして、米国の景気後退が発生すると米国の金利が低下して、さらに円高の流れが発生して円キャリートレードの解消が進みます。
今後も景気後退と円キャリートレードの解消によって厳しい展開が想定されています。
重要なのは相場の激しい上下動に巻き込まれず安定して高いリターンを獲得しんがら長期複利運用を行うことです。
以下で詳しくお伝えしていますので参考にしていただければと思います。