投資信託への投資は、プロが運用してくれると思いつつ気軽に投資をしては失敗してしまいます。
米国のインデックスファンドでさえ、見通しは誰にもわかりません。しかし、どういうわけか軽い気持ちで投資をしてしまう個人投資家が後を絶ちません。
シンプルでわかりやすいものに多くの人々は飛びつき失敗するのが世の常です。
株式投資を自分で実践するよりも、有名な大手金融機関が運用してくれる投資信託で運用を選ぶのはわかります。
しかし、投資信託にはそれぞれテーマがあり、そのテーマに沿った運用が行われます。そして、そのテーマは個人投資家が自分で選ばなければなりません。
つまりは、相当なマーケットの状況、景気見通し、トレンドを読む力がなければならないのです。
実は、非常に難易度の高い投資であることを認識しましょう。
そして、まさにトレンドが終わり基準価額の下落が止まらないとの声が止まない「キャピタル世界株式ファンド」について今回は分析してみようと思います。
Contents
キャピタル世界株式ファンドはどんな投資信託?
ファンドの概要
商品概要
商品分類:
- 単位型・ 追加型:追加型
- 投資対象 地域:内外
- 投資対象資産 (収益の源泉):株式
属性区分:
- 投資対象資産:その他資産 (投資信託証券 (株式 一般))
- 決算頻度:年1回
- 投資対象地域:グローバル (含む日本)
- 投資形態:ファンド・ オブ・ ファンズ
- 為替ヘッジ:なし
キャピタル世界株式ファンドの4つのバージョン
キャピタル世界株式ファンドには以下の4つのパターンがあります。
配当を拠出してしまうと複利効果を毀損してしまいます。基本的には配当を拠出する回数が多い年2回決算型は忌避するようにしましょう。
また、限定為替ヘッジバージョンと通常バージョンどちらの方がよいのかという議論もあります。
通常バージョンはドル円が上昇すると基準価額が上昇しますが、反対にドル円が下落すると基準価額も低下します。
一方、限定為替ヘッジバージョンは為替の変動リスクは抑制できますが金利費用を負担し続けることになります。
現在、米国の金利が高いので年間4%程度の費用が加算されます。
どちらの方がいいのかという点については運用実績の項目で詳しくお伝えしていきたいと思います。
ファンドの特色:新興国 を含む世界各国の株式に投資
特色というほどではないですが、世界中の株式を対象に中長期で運用を行います。どのような属性の株式に投資をしているのかはポートフォリオを確認しましょう。
以下は最新2024年5月末時点でのポートフォリオです。まずは業種ですが、引き続き情報技術セクターが最大の比率を占めています。
業種名 | 2024年5月末 | 2024年2月末 | 2023年12月末 | 2023年10月末 | 2023年6月末 | 2023年2月末 | 2022年11月末 | 2022年8月末 | |
1 | 情報技術 | 20.6% | 20.7% | 21.90% | 20.00% | 19.50% | 19.30% | 17.90% | 19.40% |
2 | ヘルスケア | 15.3% | 15.8% | 15.90% | 16.20% | 16.20% | 17.40% | 17.00% | 14.80% |
3 | 一般消費財・サービス | 11.7% | 11.9% | 12.40% | 12.00% | 13.10% | 12.40% | 13.80% | 17.00% |
4 | 資本財・サービス | 14.8% | 13.7% | 12.30% | 11.10% | 11.70% | 11.20% | 10.40% | 9.20% |
5 | 金融 | 10.1% | 10.5% | 10.00% | 10.20% | 10.40% | 10.50% | 10.50% | 10.30% |
6 | コミュニケーション・サービス | 9.3% | 8.7% | 7.20% | 6.80% | 6.50% | 5.50% | 5.70% | 6.50% |
7 | 生活必需品 | 5.2% | 5.5% | 5.40% | 5.70% | 6.00% | 6.60% | 6.90% | 6.30% |
8 | 素材 | 4.2% | 4.6% | 4.90% | 4.70% | 4.80% | 5.80% | 4.60% | 5.10% |
9 | エネルギー | 2.9% | 2.8% | 3.00% | 4.10% | 4.20% | 4.80% | 4.70% | 3.50% |
10 | 公益事業 | 0.7% | 0.6% | 0.60% | 0.80% | 1.00% | 1.10% | 1.20% | 1.30% |
11 | 不動産 | 0.4% | 0.4% | 0.30% | 0.40% | 0.40% | 0.60% | 0.60% | 0.60% |
現金・その他 | 4.9% | 4.9% | 5.90% | 8.00% | 6.30% | 4.70% | 6.70% | 5.90% | |
合計 | 100% | 100.00% | 100.00% | 100.00% | 100.00% | 100.00% | 100.00% |
2024年2月末時点での上位の組み入れ銘柄は以下となっています。
ただ、ご覧いただければ分かる通り組入銘柄数は271銘柄となっています。日経平均ですら255銘柄であることを考えると分散させすぎですね。
ここまで多くの銘柄に分散投資を行っていたら最早インデックスとなんら遜色はありません。
少し前まではテスラがずっと構成上位でしたが、現在はマイクロソフトがトップになってきます。
テスラは大幅に下落しましたからね。EV販売が米国でも不調です。2024年に入ってさらに下落しています。2021年の高値から考えると半値以下のところにいます。
マイクロソフトはChatGPT関連銘柄として注目されていますからね。以下は過去からの構成上位銘柄の推移です。
構成上位銘柄の過去からの推移ですが構成は大きく変わりませんでした。当然値動きの関係で順位は上下していますが。
2024年 | 2024年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2022年 | 2022年 | 20222年 | |
5月末 | 2月末 | 12月末時点 | 10月末時点 | 6月末時点 | 2月末時点 | 11月末時点 | 8月末時点 | 5月末時点 | |
1 | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト | テスラ | テスラ | テスラ |
2 | メタプラットフォーム | メタプラットフォーム | ノボルディスク | ノボルディスク | ノボルディスク | ノボルディスク | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト |
3 | ノボノルディスク | ノボノルディスク | ブロードコム | メタプラットフォーム | テスラ | TSMC | TSMC | アルファベット | アルファベット |
4 | TSMC | ブロードコム | メタプラットフォーム | ブロードコム | TSMC | テスラ | ASMLホールディング | TSMC | TSMC |
5 | ブロードコム | TSMC | TSMC | TSMC | ASMLホールディング | ASMLホールディング | ノボルディスク | メタプラットフォーム | メタ・プラットフォームズ |
6 | アルファベット | ASMLホールディング | ASMLホールディング | イーライリリー | メタプラットフォーム | メタプラットフォーム | イーライリリー | ASMLホールディング | ASMLホールディング |
7 | ASMLホールディング | アルファベット | テスラ | ASMLホールディング | ブロードコム | アストラゼネカ | アストラゼネカ | アマゾン・ドット・コム | アマゾン・ドット・コム |
8 | エヌビディア | テスラ | イーライリリー | テスラ | アルファベット | AIAグループ | ネスレ | アストラゼネカ | アストラゼネカ |
9 | アストラゼネカ | イーライリリー | アルファベット | アルファベット | イーライリリー | LVMHモエ | アルファベット | ネスレ | ブロードコム |
10 | イーライリリー | アストラゼネカ | アストラゼネカ | アストラゼネカ | アストラゼネカ | ネスレ | AIAグループ | ノボルディスク | AIAグループ |
2023年は指数が反発しましたが、この大型株の上昇がほとんどとなっており非常に脆い相場環境です。
株式市場の本格的な上昇とは、大型株も小型株も共に上昇していく腰の入った環境です。
しかし、A/D Lineを見る限りでもナスダックは明らかに大型テック株のみで上昇し、小型株は沈んだままです。
業績がついてきていないので当然なのですが。
非常にリスクが高い状況と言えます。情報技術セクターに張っているキャピタル世界株式ファンドも、氷上の上に立っていると言えると思います。
キャピタル世界株式ファンドの手数料
アクティブファンドであり、世界中の株式を調査し投資をしているのでインデックスファンドに比べると当然高くなります。
キャピタル世界株式ファンドの購入手数料は購入時の基準価額に対して3.3%(税込)、信託報酬が年率1.701%(税込)となります。
アクティブファンドの中でも高い手数料と言わざるを得ません。
【運用実績】キャピタル世界株式ファンドの基準価額チャート推移
では肝心の運用実績を見ていきましょう。キャピタル世界株式ファンドの本質的な銘柄選定の実力を見るために限定為替ヘッジありのバージョンでで基準価額を見ていきます。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
---|---|---|---|---|---|
2023年 | 6.51% | 5.62% | -3.56% | 7.73% | 16.88% |
2022年 | -7.98% | -17.62% | -5.36% | 3.79% | -25.53% |
2021年 | 3.22% | 8.92% | 0.36% | 6.62% | 20.30% |
2020年 | -18.34% | 20.82% | 12.02% | 14.84% | 26.93% |
限定為替ヘッジの場合は上記の通りのパフォーマンスとなっています。
2022年は円安に支えられていない分、普通のキャピタル世界株式ファンドに比べて損失(-25%)が大きくなっています。
ここ3年間は年率2.3%となっていますが、もう少し長いスパンで見たいものです。2022年の-25%の運用で残円ながら下落耐性がないことは確認できました。
どのバージョンがいいのか?限定為替ヘッジはつけるべき?
先ほどお伝えした通りキャピタル世界株式ファンドには以下の4つのバージョンがあります。
長期的に複利運用を行う際には配当は少ない方がよいので先ほどお伝えしたとおり年2回決算のバージョンを選ぶのは賢明ではありません。
では限定為替ヘッジはつけるべきでしょうか?
私の結論としては2024年を投資期間と考えるならば限定為替ヘッジをつけたほうがよいと考えています。
通常盤のキャピタル世界株式ファンドは円安に支えられていますが、今後ドル円は円高方向に調整する確度が高くなっています。
これまで米国株や全世界株に投資をしている日本人投資家は円安に資産が支えられていましたが、ついに凋落の時が近づいてきているのです。
今までは日米金利差の拡大によってドル円は上昇してきました。
しかし、これからは米国のリセッション懸念で米金利が低下することが懸念されています。更に日本側の金利が上昇する可能性に高まっています。
つまり米金利の低下と日本側の金利の上昇で日米金利差が縮小する蓋然性が高まっているのです。
そのため、短い期間の投資を考えるのであれば限定為替ヘッジをつけた方が合理的な選択肢となります。
しかし、長期間投資をするとなれば金利コストが累積的に効いてきます。超長期で投資を行う場合は為替ヘッジなしの通常盤に投資する方が合理的な選択肢となってきます。
全世界の平均を示す全世界株式インデックスと比較!更に魅力的な選択肢とは?
キャピタル世界株式ファンドはアクティブファンドですので、インデックスファンドのリターンを超えている必要があります。
そのため同じく全世界を対象としたインデックスに投資しているeMAXIS全世界株式インデックスと比べてみたいと思います。
そうでなければ、投資家がわざわざインデックスファンドよりも高い手数料でアクティブファンドを購入する理由がないからです。
運用開始以降のリターンは以下となります。殆どインデックスと同じですね。
結果としては全世界株式インデックスに若干ではありますが、劣後した成績となっています。
青:キャピタル世界株式ファンド
赤:eMAXIS全世界株式インデックス
直近3年の比較でみるとキャピタル世界株式ファンドは圧倒的にeMAXIS全世界株式インデックスに大きく劣後しています。
相当な調査をしているにも関わらず調査なしのファンドに負けるのは少し情けない結果となっています。
そもそも270銘柄に分散投資をしているので、調査しているといえるのか怪しいレベルですが。
また、どうしても世界の景気動向により利回りが簡単にマイナスになってしまいます。
複利を活かした飛躍的なリターンが獲得できるかどうかは神のみぞ知るというところですね。
アクティブファンドは利回りを作っていくプロ、インデックスファンドは神頼みとしての側面が強いです。
利回りを作れないプロにわざわざ自分の大事な資金を預ける理由はありません。神頼みは怖いです。
利回りを作っていけるプロに厳選したファンドを筆者の長年の経験をもとに作成した記事もありますので参考にしてみてください。
例えば筆者はヘッジファンドという選択肢に投資を行い安定した資産を構築しています。
ヘッジファンドは全世界株式を大幅にアウトパフォームした成績をリスクを抑えながら安定的に出し続けています。
以下では筆者が投資しているファンドを中心に魅力的なヘッジファンドについて詳しくまとめていますのでご覧いただければと思います。
2024年以降の今後の見通しは?
先ほどの運用実績をみればキャピタル世界株式ファンドの見通しを考えることは、全世界株式の動向を考えることと同じということが分かるかと思います。
現在の全世界の株式市場の動向を整理すると以下となります。
チェックリスト
- コロナ禍でのばら撒きの影響で強烈なインフレが発生
- 日本を除き世界中で金融引き締めを断行している
- 更に米国では財政引き締めも実行している
- 景気後退懸念が台頭してきている
- ただインフレはなかなか収まっていない
- 企業収益は今後しぼむことが既に想定されている
- 円高が進みパフォーマンスはさらに悪化する見込み
- IT・テックという成長ドライバーを失い、長年停滞する可能性も高い
インフレがおさまらないのに景気後退が起こるというスタグフレーションが目前に迫ってきているのです。このような状況は1970年代と似ています。
ここから株価が上昇していくことは想定しにくい状況となっています。実際、1970年代は株価は10年間、暴落を被りながら横ばいでしたからね。
筆者としてはいかなる局面でもリターンを目指すことができるヘッジファンドという選択肢を選び投資をしています。
ヘッジファンドは上昇局面をしっかりととりながらも、下落時でもリターンをとったり損失を抑制したりして堅実にリターンを積み上げています。
掲示板での口コミや評判
成績が芳しくないこともあり批判的な意見が大きくなっています。
まずはYahoo financeからです。
Yahoo掲示板①
お付き合いで少し買っているがここだけマイナスなんだよね
3年で見て欲しいとのことでもう少し続けてみようと思いますが手数料も高いし逆転は難しいと思うがはてさて
Yahoo掲示板②
あまり成績良くない。今後の動向で解約も視野に入れます
5ch掲示板③
キャピタル世界積二ーで買い始めたけど現状オルカンと比べてぐぬぬって感じ
まあ長期実績で見たらオルカンより全然いいから積み立てるのみだが
これに関してはキャピタル世界株式ファンドが販売資料で提示している、1972年から運用を実施した場合の仮想リターンを信じてしまっているのでしょうか?
あくまで仮想であり、「たら」「れば」を一番よく解釈した場合の、ありえないリターンです。以下の図を鵜呑みにしないほうが賢明でしょう。絵に描いた餅です。
実態としては殆どインデックスと同じで、手数料だけ払う結果となっていることを忘れてはいけません。
まとめ
キャピタル世界株式ファンドは評判が良いように聞いていました。
しかし、インデックスファンドに負けておりわざわざアクティブファンドの手数料を払ってまで投資をする先なのかとそこは疑問が生じました。
筆者は景気動向に関係なく常にマイナスを出さない、プラスリターンで複利効果が実感できる投資先を追い求めています。
資産の飛躍は、複利以外にありえないからです。
キャピタル世界株式ファンドの直近のリターンも、完全に米国の歴史上類を見ない規模の金融緩和により獲得したリターンです。
これから難易度がどんどん上がっていく相場で、インデックスファンドに負けるファンドが優秀な成績を挙げられるのかというと非常に疑問です。
以下ではインデックスの下落局面を抑制しながら高いリターンを出しているファンドを紹介していますのでご覧ください。