時代に合わせて領域に特化した「テーマ型」の投資信託は次々と生まれていきます。
今回は流行りの「AI」をテーマとし、AI関連株をポートフォリオの中心に据えたグローバルAIファンドを取り上げます。2
023年以降にChatGPTが登場してかなり盛り上がっている分野ですね。
流行りといえど、AIに関しては2000年代前半より話題であり、昨今の巣篭もりでさらに脚光を浴びました。
そのブームを牽引しているのが生成AIです。
生成AI(ジェネレーティブAI)とは、あらかじめ学習したデータを基に、文章や画像、音楽など新たなデータを作り出す人工知能(AI)の総称。専門的な知識がなくても、簡単なプロンプト(指示文)を入力するだけで、さまざまなコンテンツを作り出せる。
参照:東洋経済
ただ、2022年から2023年の前半は金融引き締めもあり大きく下落して掲示板での口コミは悪い評判が多い状態でした。
しかし、本格的な生成AIバブルが発生している2024年の状況としてはどうなっているのでしょうか?
2024年7月の大幅な下落と、今後の見通しについても言及しながらお伝えしていきたいと思います。
今後は投資対象として検討して良い商品なのかどうかを見ていきたいと思います。
Contents
グローバルAIファンドとは?
商品概要
商品分類:
- 単位型・ 追加型:追加型
- 投資対象 地域:内外
- 投資対象資産 (収益の源泉):株式
属性区分:
- 投資対象資産:その他資産 (投資信託証券 (株式 一般))
- 決算頻度:年1回
- 投資対象地域:グローバル (含む日本)
- 投資形態:ファミリー ファンド
- 為替ヘッジ:なし
ファミリーファンドでグローバル投資を行う投資ファンドであることは把握できました。詳細を見ていきましょう。
ファンドの特色:AI(人工知能)の進化、応用により高い成長 が期待される企業の株式に投資
ここでいうAIは「Artificial Intelligence、人間のように自ら学び発達していくコンピューター・プログラム」を指します。
今更な説明になってしまっていますが、以下の企業をメインに投資していくファンドです。
- AI開発
- AI開発に必要なコンピューティング技術
- AIサービス
ポートフォリオの中身をみて、さらに具体的にどのような領域なのかを理解していきましょう。
今時AIを活用していないテクノロジー企業など中々ないと思います。
基本的にハイテク銘柄で上位ポートフォリオは決まってくるのではないかと考えられます。
まずは業種は以下の通りとなっています。当然ですが情報技術が大きくなっています。
2022年以降、金融引き締めが行われている状況では最も株価がダメージを受ける領域でもありました。
組⼊上位10業種 | 2023/6末 | |
1 | 情報技術 | 57.3% |
2 | コミュニケーション・サービス | 11.2% |
3 | 一般消費財・サービス | 9.8% |
4 | ヘルスケア | 7.1% |
5 | ⾦融 | 5.0% |
6 | 資本財・サービス | 2.4% |
2024年5月末時点での具体的なポートフォリオは以下となっています。AIを活用しているなら、どのような分野でも良いということが読み取れますね。
ちなみに過去からのポートフォリオの変動は以下です。9月にはエヌヴィディアがトップに再度躍り出ました。
AIブームの中でも、マイクロソフトとエヌヴィディアだけは堅いという印象が市場に広がった結果、株価が上昇しグローバルAIファンドでも順位変動が大きくなったと思われます。
2024/6末 | 2023/12末 | 2023/9末 | 2023/6末 | 2023/3末 | 2022年11末 | 2022年8末 | |
1 | エヌビディア | エヌビディア | エヌビディア | テスラ | エヌビディア | オン・セミコンダクター | テスラ |
2 | ファーストソーラー | テスラ | テスラ | アマゾン | マイクロソフト | テスラ | オン・セミコンダクター |
3 | メタプラットフォーム | アマゾン・ドット・コム | メタプラットフォームズ | オンセミコンダクター | テスラ | マーベル・テクノロジー | ズームインフォ・テクノロジーズ |
4 | マイクロソフト | ショッピファイ | オンセミコンダクター | メタプラットフォームズ | メタ・プラットフォームズ | ブロードコム | トレードデスク |
5 | テスラ | トゥイリオ | アドビ | アドビシステムズ | オン・セミコンダクター | ディア | プラグ・パワー |
6 | ブロードコム | オンセミコンダクター | マイクロソフト | ディア | アマゾン・ドット・コム | ズームインフォ・テクノロジーズ | マーベル・テクノロジー |
7 | アルファベット | マーベルテクノロジー | アマゾン・ドット・コム | トゥイリオ | マーベル・テクノロジー | アルベマール | エンフェーズ・エナジー |
8 | アストラゼネカ | マイクロソフト | トゥイリオ | ネットフリックス | アリババ・グループ・ホールディング | マイクロチップ・テクノロジー | メタ・プラットフォームズ |
9 | パロアルトネットワーク | ブロードコム | ショッピファイ | ショッピファイ | エンフェーズ・エナジー | エレバンヘルス | クラウドストライク |
10 | アップル | メタプラットフォーム | エレバンスヘルス | エレバンスヘルス | ズームインフォ・テクノロジーズ | シュルンベルジェ | ブロードコム |
昨年8月はテスラが1位でしたが価格下落により5位に落ちています。
勢いのあるAI銘柄のエヌビディア、アマゾン、マイクロソフト、メタといったマグニフィセント7が優先的に組み入れられています。
マグニフィセント7については以下Wal Street Journalの説明を引用します。
昨年の米株市場を席巻した超大型ハイテク株が再び上昇に転じている。これらの銘柄がS&P500種指数を押し上げ、2年ぶりに過去最高値を連日更新。これに後れをとるまいと投資家は再びハイテク株に資金をつぎ込んでいる。その先頭に立っているのが昨年市場のけん引役だった「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれるハイテク7銘柄だ。
特にこのなかでも光を放っているのがエヌビディアです。
2023年の年初から3倍になった時価総額は、日本の上場企業でトップに君臨するトヨタ自動車の約4倍。アメリカの上場企業の中ではアップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾンなど名だたる巨大IT企業に次ぐ5位に位置する――。
5月末に時価総額が一時1兆ドルの大台に乗ったことで話題になったのが、アメリカの半導体メーカー・エヌビディアだ。
同社はGPU(Graphics Processing Unit)と呼ばれる画像や映像の処理を専門に行う半導体を手がける。ゲーミングPCなどで映像をなめらかに表示するために用いられてきたGPUは近年、自動運転技術や暗号資産の採掘作業(マイニング)で高度な演算処理の担い手として脚光を浴びた。
そして今、GPU需要拡大の新たな起爆剤となっているのが、「データセンター」とChatGPTに代表される「生成AI」だ。
実際Nvidiaの業績はAIが活況となってから急激に上昇しています。2024年6月にはマイクロソフトとアップルを抜いて時価総額で世界第一位に躍り出ました。
テーマ特化型の投資信託は下落相場で逃げてくれれば良いのですが、常に投資をしてなければならないというバイアスがあります。
実際、2024年7月から8月上旬の下落を被弾してしまった方は茫然自失となってしまったはずです。
基本的に、投資信託を購入するのであればテーマ型は避けるのが定石でしょうね。
マーケットタイミングに自信がある人だけがテーマファンドに興味を持つべきでしょう。
ノリで買うような類の商品ではありません。あまりにもリスクが高いです。どんな相場でもリターンが期待できるファンドを探しましょう。
ファンドの特色:AIに関連する企業の投資戦略に強みをもつ、アリアンツ・グローバル・ 2 インベスターズU.S.LLCが実質的に運用
アリアンツグローバルが実質的な運用を実施しています。カッコ良いHPですね。
本社はアメリカのサンフランシスコにあります。
2021年に少なくとも25件の訴訟が投資家によってアリアンツ・グローバルに対して起こされ、総額60億ドルの賠償金を求められた事案が直近では有名ですね。
世界的な(ドイツの)保険グループ傘下の運用会社ではあります。
グローバルAIファンドの手数料
アクティブファンドであり、アリアンツの助言も受けているのでインデックスファンドに比べると当然高くなります。
しかし、テーマは個人投資家が選ばなければならないので、その点は割高に感じますね。
グローバルAIファンドの購入手数料は購入時の基準価額に対して3.3%(税込)、信託報酬が年率1.925%(税込)となります。
【運用実績】グローバルAIファンドの基準価格チャート推移!利回りとリスクとは?
基準価額は2020年の異次元緩和で大暴騰し2022年からの金融引き締めで暴落しましたが、2023年に生成AIバブルが発生して最高値を超えていきました。
しかし、2024年7月から大きな下落を被っています。(この理由については後述します。)
上記は円安が重なりダメージは少なくなっていますが、円安の恩恵が無くなった場合は以下のような形に収束します。
これから米国も本格的に不況を織り込み、円高も追随するとなると、この程度の下げでは済まないかもしれません。
まだ10年も経過していないファンドなので、真の実力は測れませんが直近のパフォーマンスは以下です。
2021年下半期からずっと厳しい状態が続いていましたが、2023年にAIブームのおかげもあって大きく反発しました。
そして後述する2つの原因で直近は大きく下落しています。
ただ、まだ2021年に投資をした人は大きな含み損を抱えています。
とにかくファンドマネジャーの腕というよりも、市場の盛り上がりにパフォーマンスが左右されてしまいます。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
---|---|---|---|---|---|
2023年 | 12.35% | 17.49% | -7.64% | 15.05% | 40.27% |
2022年 | -10.58% | -32.20% | -1.68% | -11.22% | -47.08% |
2021年 | 1.95% | 13.40% | -5.81% | 0.41% | 9.34% |
2020年 | -12.91% | 42.31% | 20.23% | 31.97% | 96.64% |
2019年 | 20.56% | 0.88% | -6.04% | 12.30% | 28.34% |
大きな損失を防ぐことができなければ、ハイリターンには繋がりません。
グローバルAIファンドはS&P500指数(円建)に劣後
グローバルAIファンドはインデックスに対してプラスのリターンを目指すアクティブファンドです。
米国企業に投資をしているので対象となるのは米国の代表的な指数であるS&P500指数です。
以下はS&P500指数(円建)とグローバルAIファンドの基準価額の推移です。
青:グローバルAIファンド
赤:S&P500指数(円建)
2020年からグローバルAIファンドは指数を大幅にアウトパフォームしましたが、2021年後半から下落して現在は指数に劣後しています。
グローバルAIファンドは価格の値動きが大きい点も含め、S&P500指数の方が優れた成績を残しているということになります。
特に2022年からは大きくアンダーパフォームしていることが読み取れます。
青:グローバルAIファンド
赤:S&P500指数(円建)
直近の下落理由とグローバルAIファンドの今後の見通しとは?
皆さんが一番気になっているのは直近のグローバルAIファンドの下落理由と今後の見通しかと思います。
この下落の理由は大きくわけて二つあります。
下落理由①:米国の景気後退が懸念されている
2022年から続く高金利と高インフレによって遂に米国の景気が限界を迎えている兆候がでてきています。
低位に抑えられていた失業率が急激に上昇をはじめる兆しを見せています。
失業率が上昇すると、当然全体の所得が減少するので企業収益も低下していきます。
企業収益が低下すると、当然株価も下落していきます。まだ本格的な景気後退とはなっていませんが、懸念は着実に高まっています。
下落理由②:生成AIバブルがはじけかかっている
2023年のChatGPTの登場によって生成AIバブルが発生しました。
これによって恩恵を受けたのがNvidiaなどの半導体株です。AIのビッグデータの計算に半導体が不可欠だからです。
特にAIのプログラミングのプラットフォームに不可欠な存在となっているNvidiaは1年半で株価が10倍になって世界一の時価総額をほこるまでになりました。
(今は転落しています。)
しかし、Nvidiaの出荷額が100兆円に対して、AI企業や事業の売上が5兆円に満たない水準で持続不可能なバブル状態となっています。
市場がバブルであると気づいて、遂に半導体株が大きく下落していきました。グローバルAIファンドのテーマが崩壊しているわけですから深刻です。
実際、Nvidiaは以下の通り直近大きく下落していきました。
AIバブルの崩壊ははじまったばかりです、ここからしばらくは厳しい展開が想定されます。
テーマ株は一旦ブームがすぎると売り込まれていきます。よほどタイミングを見計らって投資するスキルがない方は手出し無用です。
やはり、市場環境に依拠せずに安定したリターンを見込める選択肢が魅力的になってきます。
どのような市場環境であってもプラスのリターンを目指す絶対収益型のファンドとして注目されているのがヘッジファンドです。
ヘッジファンドとは絶対収益型ファンドであり、市場が下落局面であってもファンドマネジャーの才覚を生かして瞬時にポートフォリオを入れ替え、リターンを狙っていきます。
投資信託では臨機応変にポートフォリオの変更ができませんので、これはかなり弱点ともいえ、その点をヘッジファンドは補っております。
さらに一流の頭脳を持つファンドマネジャーが運用を担当しているのです
個人投資家でも投資可能なファンドについては以下で詳しく纏めていますのでご覧いただければと思います。
掲示板やネット上での評判や口コミ
掲示板やネットでの口コミは以下となっています。直近の下落でだいぶ不満が溜まっているのが伺えます。
Yahoo finance掲示板①
アメリカ頼みのファンドは暗雲立ち込めたな?バブル崩壊近いで(笑)アーメン(笑)
Yahoo finance掲示板①
すごい下落やな
遂にギャンブルファンドになっているが自己責任とはいえ銀行に薦められて購入した人はターイへんやな?投資家は複数ファンドで運用しているのが原則なのでプラスとマイナスあわせて売却やな?只今検討中や!
Aさん
グローバルAIファンドなんてもう持っていても下がるだけです。全て売却して他の米国ファンドに買い替えましょう!Bさん
グローバルAIファンド今は耐え時です。売却はもったいないですよ!持ち直してくれるのであれば正直まだ売却したくない。
どうしようかなぁ・・・— 凛音@低迷期 (@rin_rin_1122) August 6, 2022
まとめ
グローバルAIファンドについて取り上げました。
米国の景気後退懸念に加えて生成AIバブルの崩壊で厳しい状況が続くことが見込まれます。
このようなテーマ型投信は大事な資金ではなく、遊びの資金で金融緩和初期に買うくらいがちょうど良いのではないでしょうか。