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BMキャピタルは四半期毎に運用実績と、完了した投資事例の解説をしてくれています。
今回は過去投資事例の中から「金下建設」を取り上げて紐解いていきたいと思います。
Contents
金下建設とは?
まず鐘下建設という銘柄を聞いたことがある人は殆どいないのではないと思います。概要を以下に記します。
会社名 | 金下建設 |
住所 | 〒629-2251 京都府宮津市字須津471番地の1 |
代表取締役 | 金下 昌司 |
時価総額 | 120億 |
設立 | 1951年4月10日 |
上場市場 | 東証二部 |
事業概要 | 「土木事業」「建設事業」 |
BMキャピタルが狙う純現金性資産だけで時価総額を上回るような超割安な銘柄は小型株にしか存在しません。
金下建設のような時価総額100億円程度の銘柄に多く存在しているのです。
土木事業
金下建設の土木事業では、公共工事を中心とした道路・トンネル・橋梁・河川整備などの土木工事や道路の舗装工事幅広い分野でみなさまの暮らしを支える社会インフラ整備を行っています。また、アスファルトプラントでアスファルト合材の製造・販売やアスファルト廃材を再生合材へのリサイクルを行っています。
建設事業
金下建設の建築事業では、建築物の設計・監理業務から施工までを手掛けています。医療・福祉・商業施設から個人住宅まで幅広く、また公共・民間工事ともに多くの実績を持っています。
当社が設計・施工した建築物がみなさまに安心で快適に過ごせるように空間を提供することが、社会に貢献する重要な役割の一つであると考えています。参照:金下建設
それでは詳しくBMキャピタルが投資した経緯についてみていきたいと思います。
BMキャピタルが投資した時点での金下建設のバランスシート
BMキャピタルが投資銘柄とする基準について整理します。
BMキャピタルは総資産の中から「現金」と即座に換金可能性が高い「有価証券」「営業債権」をまとめた現金性資産から総負債を引いた純現金性資産をベースに考えます。
純現金性資産のみで時価総額を上回っている圧倒的に割安な銘柄に投資を行います。
では金下建設のバランスシートを確認していきましょう。以下がBMキャピタルが投資を決断した時点のバランスシートです。
【総資産】単位100万円
現金性資産
=
現預金8,725+受取手形4,456+有価証券(649+5,755)
=
19,585百万円
【総負債】単位100万円
つまり純現金性資産は以下となります。
純現金性資産
=
19,585 - 4,207
=
15,378百万円
図にして纏めると以下となります。
次に時価総額を確認していきたいと思います。
時価総額は企業をどれだけの資金があれば丸ごと購入できるのかという指標で以下の式で表すことができます。
時価総額 = 発行済株式数 × 株価
以下は当時の株主構成です。
発行済株式数は自社株を除きますので以下となります。
発行済株式数
=
総発行株式数19,033,000
-
自社株 3,424,000
=
15,609,300
当時の株価は当時の株式統合前のベースで340円だったとのことなので時価総額は以下となります。
時価総額
=
発行済株式数 15.61百万円
×
340円
=
5,307百万円
つまり今までの議論を纏めると以下の表のようになります。
余裕で条件を満たしていますね。というか現金持ちすぎで、これを活用できてないとみることもできます。
投資時点の金下建設の事業価値
BMキャピタルが投資を実行する時は現金価値だけでなく事業価値も算定します。
当時の金下建設は売上も横ばいで事業利益も成長はしていませんでした。
売上高 | 営業利益 | |
2009 | 10,658 | 238 |
2010 | 16,660 | 410 |
2011 | 12,986 | -342 |
2012 | 13,319 | -492 |
2013 (予想) | 19,400 | 20 |
過去 5 年平均値 | 14,604 | 28 |
この程度の利益ですと事業価値は殆ど企業価値に影響を及ぼさないレベルとなりますので、特段考慮する必要はなさそうです。
つまり、BMキャピタルが投資した時点では主に純現金性資産の価値を根拠に投資を実行していたということが伺えます。
投資した時点はちょうど株価が沈みこんでいる状況でした。
BMキャピタルがアクティビストとして自社株買を要請
先ほども言及しましたが、当時の金下建設は圧倒的に悪い効率を誇っていました。資産の9割が現金性の資産となっています。
さらに、この有価証券の内訳は以下の通りとなっています。
上場株式:2,695 百万円
金融機関を中心とする社債:4,235 百万円
上場投資は老舗企業にありがちな持ち合い株で、戦略的要素はありません。また社債の利率は支払金利から逆算すると0.7%程度の低金利となっています。
金融機関や投資ファンドではないのでお金を事業に充てて、事業収益を生む必要があります。
事業に使わないのであれば配当金や自社株買を通じて株主に還元する必要があります。
そこでBMキャピタルは金下建設に対して自社株買の提案を行いました。
実際に長い交渉の末、経営陣の説得に成功して以下のスケジュールで自社株買が行われていきました。
2014年11月27日 :238,800 株(発行済み株式の 6.27%)
2015年8月21日 :12,000 株(発行済み株式の 0.32%)
2016年3月1日~4月4日 :62,800 株(発行済み株式の 1.65%)
2017年2月14日~3月31日 :162,000 株(発行済み株式の 4.26%)
2018年5月23日 :463,100 株(発行済み株式の 12.17%)
2020年2月14日 : 116,200 株(発行済み株式の 3.05%)
自社株買のプレスリリースがでたことで金下建設に注目が集まり株価は上昇していきました。
コラム:高すぎる役員報酬の是正も要求していた
要求としては通りませんでしたが、BMキャピタルは収益面の改善提案も行なっていたそうです。
投資した当時、営業利益ベースでマイナスを出す時もあったにも関わらず、創業家が牛耳っているので高い役員報酬を支払っていました。
時には赤字を出しているにも関わらず役員報酬を1億円拠出しており、会社収益を明確に圧迫していました。
しかる状況を受けてBMキャピタルは役員報酬の引き下げを要求しました。
しかし、創業企業ということもあり一族の力が強く力及ばずとの悔しさが報告書には滲み出ていました。
BMキャピタルは株主のためとなる提言を積極的に行っているアクティビストであるという矜持を感じ取ることができました。
BMキャピタルが利益確定をした理由
BMキャピタルは2019年に入り金下建設を利確しています。投資時点から3倍近くなっていました。
因みに2013年から2017年にかけてBMキャピタルは継続的に買い増ししていたため、平均買い付け単価は3,150円程度になっていました。
売却した時点での純現金性資産を自社株買を実施したあとの発行済株式数で割った時の株式価値は6,500円となっていました。
2019年に入り株価の上昇がピークを迎え理論的な株式価値6,500円に急速に近づいていった為、ここら辺が山だろうというファンドマネージャーの判断のもと利益確定がなされました。
上記のチャートをご覧いただければ分かる通り、その後急落していますので結果的に最高のタイミングだったということになります。
緻密な計算を行ったとしてマーケットは計算通りに動いてくれるわけではありません。最後は技術や勘といった部分も重要になってきます。
長年マーケットにいるからこそ正しい判断を行うことができるということができるでしょう。
まとめ
金下建設は純現金性資産だけで時価総額を大きく上回る資産を保有していました。
しかし、資金を上手く活用できておらず、ただ現金が放置されている状態となっていました。
BMキャピタルは株式を大量に保有し、大株主として自社株買を要請して株式価値を引き上げるとともに、市場からの注目を意図的に向けさせていきました。
結果として株価は上昇基調を維持し、ピークに達した2019年に利益確定しています。
バリュー株投資とアクティビスト投資が綺麗に決まった理想的なパターンということができるでしょう。