配当金獲得を目指した投資としてJリートや日本の高配当株への投資だけでなく、最近は米国の高配当株への投資も流行しています。
特に高配当株にまとめて投資できるSPYDは日本人投資家の間でも人気となっています。
ただ、大きな資産を構築して配当金生活をするという目標があるのであれば、必ずしも合理的な選択肢というわけではありません。
特に若い方で、これから資産を作っていこうとしている方にとってはおすすめできません。
本日はSPYDについて、そもそもどのようなETFなのかという点を紐解いた上で弱点などを紐解いていきたいと思います。
Contents
SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)の特徴
SPYDの正式名称はSPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETFです。ではどのようなファンドなのでしょうか?
そもそもETFとは?投資信託とは何が違う?
ETFとはExchange Traded Fundの頭文字をとったものです。文字通り取引所(Exchange)で取引される(Traded)投資信託(Fund)のことです。
ETFは対象とするインデックスに連動するように組成されています。同じくインデックスへの連動を目指すインデックス投信との違いは以下の通りとなります。
ETFは通常の株式と同様に市場が空いてる時にいつでも売買できるのが魅力的なポイントですね。
ETF | インデックスファンド | |
購入場所 | 証券会社、銀行等の金融機関 | 証券会社 |
売買タイミング | 1日1回の価格で売買 | 市場が空いてる時間いつでも |
注文方法 | 金額、口数指定 翌日に基準価額が判明 |
成行や指値で可能 |
分配金自動再投資 | 可能 | 不可能 |
分配金の外国税額控除 | 必要なし | 自ら外国税額控除を申請 |
ただ、米国のETFに関しては外国税額控除の申請を行わなければ、配当金に対して日米で二重課税となり28.3%も徴収されることになります。
一方、投資信託の場合は外国税の10%だけを徴収された後に国内税を取られる前に再投資することが可能になるので、長期投資の場合は投資信託の方が効率がよいということになります。
SPDRとは?
SPYDの正式名称はSPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETFのSPDRの意味についてお伝えします。
SPDRはステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが提供するETFのブランドです。
運用資産残高は世界第4位の規模となっています。
ブラックロック、バンガード、チャールズシュワブとならんで世界の大手資産運用会社ということになります。
連動を目指す指数は「S&P500高配当指数」
SPYDが連動を目指すインデックスはS&P500高配当指数です。
S&P Global社の説明は以下の通りです。
The S&P 500 High Dividend Index serves as a benchmark for income seeking equity investors. The index is designed to measure the performance of 80 high yield companies within the S&P 500 and is equally weighted to best represent the performance of this group, regardless of constituent size.
日本語訳すると以下の通りとなります。
S&P500高配当インデックスはは、S&P500構成銘柄のうち70の高利回り企業のパフォーマンスを測定するよう設計されています。
構成銘柄の規模に関係なく、このグループのパフォーマンスを最もよく表すよう均等に加重されています。
S&P500指数は時価総額に応じて組み入れる時価総額加重平均指数ですが、S&P500高配当指数は組み入れ企業を同じ比率で組み入れるという形で設定されています。
均等に組み入れているので構成上位銘柄をお伝えしてもあまり意味がありませんが、代表的な銘柄は以下のようなものが挙げられます。
銘柄名 | Ticker |
CITIGROUP INC | C |
MORGAN STANLEY | MS |
AT&T INC | T |
CAMDEN PROPERTY TRUST | CPT |
ABBVIE INC | ABBV |
CHEVRON CORP | CVX |
PFIZER INC | PFE |
DOW INC | DOW |
KRAFT HEINZ CO/THE | KHC |
組み入れセクターの比率
均等ポートフォリオなので銘柄について言及してもあまり意味はありませんが、セクター比率をみるとどのようなファンドなのかを知ることができます。
以下は2024年6月末時点でのセクター比率です。
セクター | 構成比率 |
不動産 | 27.88% |
金融 | 19.72% |
公益事業 | 18.21% |
生活必需品 | 7.29% |
エネルギー | 5.98% |
ヘルスケア | 5.90% |
素材 | 5.44% |
一般消費財・サービス | 4.47% |
コミュニケーションサービス | 2.74% |
情報技術 | 1.27% |
資本財 | 1.11% |
不動産、金融、公益事業で全体の70%近くを占めています。
これらの産業は成長力が乏しく、成熟産業といわれる銘柄が多い分野です。
成長が期待できるコミュニケーションサービスや情報技術の組み入れ比率はかなり低くなっています。
配当利回りやEPS成長率などのデータ
重要な配当利回りやEPS成長率などのデータは以下となります。
3-5年のEPSの予想成長率 | 6.53% |
配当利回り | 4.72% |
PER | 15.05倍 |
PBR | 1.7倍 |
EPSとは一株あたり純利益のことです。投資家にとって最も重要な指標の1つですね。EPS成長率は当然ですが高い方がよいです。
S&P500指数のEPS成長率が17%程度であることを比べると、SPYDのEPS成長率の6.5%というのは非常に低いですね。
SPYDの運用実績!S&P500指数に惨敗!?
SPYDの運用実績について見ていきいましょう。運用開始から8年以上が経過していますが40%程度しか上昇していません。
年率リターンは4.3%程度です。ただ、これはあくまで配当利回りを差し引いた数値です。
配当利回り4.5%程度を足し合わせると年率9%程度になります。ただ、これは税引き前の数値です。(後述します)
S&P500指数に連動するVOOと比較すると以下となります。
以下は配当金を加味していないので実際はもう少しリターンの差は小さくなりますが、配当金を加味したとしてもS&P500指数の圧勝ですね。
SPYDの配当金と配当利回りの推移
次にSPYDに投資している方の最大の目的である配当金と配当利回りの推移についてみていきましょう。
あまり2016年から配当金の金額は殆ど変わっていませんね。平均すると配当利回りは4.63%となっています。
年度 | 年間分配金 | 分配利回り ※年末時点株価で算出 |
2016年 | $1.51 | 4.34% |
2017年 | $1.42 | 3.80% |
2018年 | $1.62 | 4.75% |
2019年 | $1.75 | 4.45% |
2020年 | $1.63 | 4.95% |
2021年 | $1.55 | 3.98% |
2022年 | $1.98 | 5.01% |
2023年 | $1.82 | 4.66% |
平均 | $1.71 | 4.63% |
SPYDをおすすめしない理由とは?デメリットを紐解く!
ここまでご覧いただいた方で鋭い方は気づいていらっしゃるかと思いますが、SPYDで配当金生活を目指すのはすすめしません。
その理由についてお伝えしていきます。
リターンの多くを配当金として拠出し複利効果を毀損している
SPYDが運用を開始した2016年から2024年は株式市場のバブル相場とも言える環境が続いています。
しかしSPYDは殆ど配当金にだしてしまっているので8年以上が経過しているにも関わらず40%しか上昇していません。
例えば分かりやすく以下の2パターンで1000万円を運用した場合で比べてみましょう。単純化のため税金は加味しないことにします。
- パターン①:10%のリターンをだし配当金を出さず10年間運用
- パターン②:10%のリターンをだし毎年5%の配当金を出しながら10年間運用
パターン① | パターン② | ||
価格 | 配当金 | ||
現在 | 1000 | 1000 | 0 |
1年後 | 1100 | 1050 | 50 |
2年後 | 1210 | 1103 | 53 |
3年後 | 1331 | 1158 | 55 |
4年後 | 1464 | 1216 | 58 |
5年後 | 1611 | 1276 | 61 |
6年後 | 1772 | 1340 | 64 |
7年後 | 1949 | 1407 | 67 |
8年後 | 2144 | 1477 | 70 |
9年後 | 2358 | 1551 | 74 |
10年後 | 2594 | 1629 | 78 |
利益 | 1594万円 | 629万円 | 628万円 |
リターン合計 | 1594万円 | 1257万円 |
パターン①の利益1594万円とパターン②の利益1257万円では337万円の差がでてきています。
期間が長くなれば長くなるほど、この差は大きくなっていきます。特にまだ配当金生活を目指して資産を大きく増やしていきたい方にとってはおすすめできる選択肢ではありません。
成熟企業ばかりでそもそも高いリターンを望めない
セクターの項目でお伝えした通りSPYDは不動産、金融、公益事業などの成長性が低い企業を多く組み入れています。
不動産も不動産ファンドであれば大きなリターンが見込めますが、配当利回りが高い企業はたいていがリート法人です。
リート法人は不動産投資の醍醐味である値上がり益を追求せず、賃料収入をメインとするため株価は上昇しにくいというデメリットがあります。
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また、金融や公益事業は利益が伸びにくく、株価も上昇の勢いが弱いセクターになっています。
現在、世界を牽引しているのが大型のテクノロジー企業です。
今後もテクノロジーが世界を牽引していくということを考えるとSPYDの投資銘柄はパフォーマンス的にも劣後していくでしょう。
とはいえテクノロジー企業にかたよった投資を行うと定期的に暴落を被り退場となる可能性も十分にあります。
→ NASDAQ100への投資はやめとけ!今後はやばい?ナスダック100を長期投資先としておすすめしない理由をわかりやすく解説!
暴落を回避しながらS&P500指数やNASDAQ100指数より高いリターンを狙いたいという方は筆者も投資しているヘッジファンドという選択肢もあります。
以下で魅力的な投資先については紹介していますので参考にしていただければと思います。
SPYDは手元に残る配当利回りは決して高くない
最初の項目でお伝えしたとおり米国のETFからの配当金の場合は米国と日本の二重課税で30%近い税金が徴収されることになります。
確定申告で外国税額控除を行えば国内と同じ20.315%の税率まで引き下げることができますが、わざわざ確定申告を行うというのはサラリーマンの方などにとっては億劫になりますよね。
たとえSPYDが4.5%の配当利回りだとして税後だと3.2%になります。1億円を投資していたとしても年間320万円程度しか手元に入って来ません。
まとめ
今回のポイントをまとめると以下となります。
- SPYDは各銘柄の組み入れ比率は同じ均等ポートフォリオ
- 投資セクターは不動産、金融、公益セクターといった成熟企業が大半
- 配当利回りは4.5%程度ではあるが日米で二重課税をうける
- リターンはS&P500指数に大幅に劣後
- 長期投資を行い配当金生活ができる資産を構築する対象としてはおすすめできない